(無題)

南米旅行第12日目。
世界最南端の称号を懸けて。

8:00、起床。
Ushuaia(ウシュアイア)は辺境にある所為で
日本で得られる情報が少な過ぎたので、
まずは情報収集の為に
インフォメーションセンターに向かいます。


朝のUshuaia。
どんよりした天気ですが、
これがTierra del Fuego(フエゴ島)の特徴です。
降水量が多いからこそ、
風の強いこの不毛の地でも
これだけの植生があるのです。


犬が何かを咥えて戯れてきました。
ジャーマンシェパードなのでちょっと怖い。
でも、人懐こい性格です。
遊んであげていたら段々興奮してきたので退散。


森を切り拓いて街を作った事が
良く分かる風景ですね。
何故あそこの部分だけ特に上まで家が建っているのかな?


港までやって来ました。
座礁した船。
何故か撤去されず、
Ushuaiaのシンボルのようになっています。


その隣にはUshuaia港に着岸する豪華客船が。
Ushuaiaは南極クルーズの拠点でもあります。
南極も気になるところではありますが、
最低でも50万円は下らないので
パタゴニアの物価如きでひいひい言っている
貧乏大学生とは無縁の世界です。


またしてもあったIslas Malvinas
(マルビナス諸島、フォークランド諸島)は
アルゼンチン領アピール。
“Prohibido el amarre de los buques ingleses”
(イギリスの海賊野郎は繋留禁止!)
と書かれています。


Ushuaiaのパネル。
“fin del mundo”(世界の果て)と書かれており、
記念撮影スポットになっています。
しかし、折角なら写真だけでは無く
何か形に残るものが欲しい。
インフォメーションセンターで
到達証明書が貰えるとの事なので行きます。
あれ?何だか入口に人が集まっているな…


ストライキ!?
アルゼンチンはストの多い国とは聞くけど…
まさかここで遭うとは…
交通機関で無いだけまだマシか…?


仕方無いので旅行会社を回って自力で情報を集めます。
まず知りたいのがPuerto Williams
(プエルト・ウィリアムス)へのツアー。
都市としてはUshuaiaが世界最南端なのですが、
Tierra del Fuegoの南にある
Isla Navarino(ナバリノ島)に
Puerto Williamsという集落があり、
世界最南端の「村」とされています。
折角ならそこにも行ってみたい!

まず地球の歩き方に載っていた
Ushuaia Boatingという会社の窓口へ
…と思ったのですが閉店中。
次に、ネットで出て来たPiratourの窓口へ。
…が、何やら港が云々かんぬんとかで
Puerto Williamsへのツアーは休止中。
その窓口で紹介された
Rumbo Surという会社が扱っていましたが、
片道US$130と高い上に月・水・金のみの運行で、
しかも同日中には戻って来られず、
最短でも水曜日に出て金曜日に戻るという日程。
その上、宿の手配はしてくれないとの事。
どう頑張っても不可能なので諦めました。
日本でこの情報を得ていれば
それに合わせて行程が組めたかも知れないけど…
まあ、Puerto Williamsは軍の駐屯地みたいなものらしいし、
都市としてはUshuaiaが世界最南端だから
世界最南端に来た事は間違い無いんだ!
Puerto Williamsなんて無かった、良いね?


気を取り直して別の世界最南端へ向かいます。
バスターミナルからバスに乗って西へ。
一日乗車券的なものをAR$300で購入。


街を離れるとすぐ未舗装路になります。
舗装されているのは市街だけです。


20分程走って駅に着きました。
Ferrocarril Austral Fueguino(南フエゴ鉄道)、
別名”El Tren del Fin del Mundo”
「世界の果て鉄道」です!
「世界の終わり鉄道」とも訳せますね。
この駅の名もずばり”Estación Fin del Mundo”
「世界の果て駅」です。


軌間500mm、全長8kmという
遊園地にあるような可愛らしい鉄道で、
走る速度も小走りくらいのもの。
運賃も国立公園の入場料(AR$170)は別で
AR$530と暴利に近い値段設定。
しかし、僕は何としてもこれに乗りたい!
「世界最南端の鉄道」の称号は何物にも代えられない。
それが乗り鉄の本能だから。
乗り鉄では無いSTとISは
運賃が高いので乗らずに徒歩で執着を目指す事に。
FMは細かい米ドルを消費したいという事で乗りました。
(US$1=AR$15換算)


11:30発の列車に乗車。
ホームページでは12:00発となっていたけど…
お陰でグッズを買えなかった。


車内はこんな感じ。
改札で日本語のパンフレットも貰え、
スペイン語と英語で車内放送があります。


列車はそろそろとTierra del Fuegoの
大自然の中を進みます。


10分程でLa Macarena駅(マカレナの滝駅)に到着。
唯一の途中駅です。
乗客は15分程散策する事が出来ます。


ここで上下列車が交換。
機関車は幾つかの種類があるようです。


駅名となっているCasada de la Macarena
(マカレナの滝)へは駅から遊歩道が延びています。
3分もあれば着く距離です。


これがCasada de la Macarena。
駅を造る程のものかな…?
アルゼンチンでは滝は珍しいのでしょうか。


Río Pipo(ピポ川)の方に下りる事も出来ます。


Tierra del Fuegoの先住民族の住居が展示されていました。
えっ、あれ?
あの子供が1時間くらいで作ったようなやつ?
熱帯の暑い地方とかなら兎も角、
南極も程近いこの地で生きていけるのか…?


再び列車に乗り込みます。


列車は蛇行するRío Pipoの傍を走ります。


無造作に切られた切株が
そこら中に立っています。
地の果ての島というその立地から
嘗ては流刑地としての側面があったUshuaia。
このFerrocarril Austral Fueguinoは
1909年から敷設され始め、
1947年に中央政府によって閉鎖された
囚人が木を伐り出す為に作られた囚人鉄道を、
半世紀近い時を経て1994年10月11日に
観光鉄道として復活させたものなのです。
僕と同級生。
流石の僕でも、単に世界最南端の鉄道を名乗る為だけに
玩具のような鉄道を敷いただけだったら
あんな高い運賃は払っていません。
このFerrocarril Austral Fueguinoは
元々はれっきとした実用鉄道だったのです。


しかし、100年前の切株が
こんなちゃんと残っているものなんだな…
それくらい再生力が弱いという事でしょうか。
日本で100年前に伐採した切株だったら
跡形も無いくらい森の中に埋もれていそうだけど。


森の中に入ってきました。


12:30、Parque Nacional駅(国立公園駅)に到着。
ここはもうParque Nacional Tierra del Fuego
(ティエラ・デル・フエゴ国立公園)の中。
南緯54度50分9秒。
紛れも無く世界最南端の駅です。


駅と言っても、駅舎のような建物はこれだけ。
最南端である事を示すものがあったりはしません。
最果てらしいと言えば最果てらしいかも知れませんが。


木の伐採という元々の敷設目的からして
何処かに繋げる為の鉄道では無いので、
駅の周囲には何もありません。
日本なら秘境駅と呼ばれるレベル。
多くの乗客は折り返し列車で戻っていきます。
(片道乗車でも往復乗車でも運賃は変わらない。)


僕等はSTとISの到着を待って
徒歩で国立公園の奥へと向かいます。
国立公園と言ってもこの辺りはただの森です。


バス停でバスに乗ります。
一日乗車券を買ったバス会社ではありませんでしたが
乗せてくれました。


Lago Roca(ロカ湖)の畔で下車。
トレッキングの拠点になっている場所です。
折角の国立公園なのでトレッキングしてみます。
標高900mちょっとの小ピークに登るトレイルや
チリ国境まで行くトレイルもありますが、
今回は短いトレイルを繋ぎます。
南米のイメージとはおよそ掛け離れた
スイスや北欧を想起させる景色です。
どちらも行った事ありませんが。


湖畔にはキャンプ場があり、
バーベキューを楽しむ事も出来ます。
良いなー、バーベキューしたいなー。
しかし、僕等にそんな持ち金はありません。


車道に出てRío Lapataia(ラパタイア川)を渡る。
大型バスも通る橋ですが、木造です。
隣には崩落した橋の橋脚が残されています。
木造にこだわるのは何故なのだろう…


最果て感が出て来ましたね。


再びトレッキング路を歩きます。


途中、崩落した桟橋を見付けたので…


乗って遊んだり。
長閑な時間だ…
高原リゾート地に来たような気もします。


道はまだまだ続きます。
この辺りは葉が色付き始めていますね。
Piazzolla(ピアソラ)作曲のタンゴの名曲に
「ブエノスアイレスの四季」があるように、
アルゼンチンもまた四季のある国であり、
Parque Nacional Tierra del Fuegoは
燃えるような美しい紅葉でも有名です。
見頃の紅葉を見るのは
大学の授業の日程上厳しいですが。


道に迷ったりしつつも進みます。
小雨がぱらついたり、天候が安定しません。
帰りのバスの時刻も近付いてきたな…


あっ、キツネだ!
Río Ovando(オバンド川)の畔にキツネが居ました。
人馴れしているのか、余り急いでは逃げません。


湾が見えてきました。
ゴールまで後少しです。


南極ブナの森を抜ければ…


着きました!
Buenos Aires(ブエノスアイレス)から3,079km、
Alaska(アラスカ)から17,848km、
アルゼンチン国道3号線と
パンアメリカンハイウェイの終点、
Bahía Lapataia(ラパタイア湾)です!


国道3号線はここで終了ですが、
ボードウォークがまだ少し続いているので歩きます。


湾を一望する突き当たり。
ここまで遠かったなぁ…
欲を言えば湾では無く
岬の方が最果て感が出たんだけど。
南米最南端の岬、Cabo de Horno(ホーン岬)は
計画段階では割と本気で考えたのですが、
Ushuaiaから直線距離で100km以上、
船に乗る事300kmという隔絶された場所で、
そこへのクルーズを執り行う会社は一社のみ。
最も安い席でも何と20万円超え。
泣く泣く諦めたのであります。
世界最南端は何でも値段が高過ぎる。


それでは、バスでUshuaia市街へと戻ります。
スーパーに寄ってから宿へ。


兎に角物価の高いパタゴニア。
既に昼食を抜いて一日二食にしていますが、
普段の旅行のように毎食外食では
とてもお金が保たないので、
自炊に切り換えたのでした。
今回の宿は貸別荘のような宿で、
一般的な家庭にあるようなキッチンを
好きなだけ使う事が出来るので、
今夜は皆で力を合わせて夕食を作ります。


出来ました!
観光で疲れた後に自炊というのは
一人だと怠くて仕方無いでしょうが、
皆でやるととても楽しいです。
洗い物とかも分担出来るのが良いですね。
力を合わせて作ったご飯は美味しいです。
自炊旅行もありだな。
今夜はお腹一杯になってぐっすり寝ました。

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