北国旅行第9日目。
線路の終点、最果ての地。
7:40頃起床。
駅に停車していました。
番犬のような大型犬が3匹ホームにいます。
駅名標が何処にも無いから何という駅か分からないな…
駅舎に小さく駅名が書いてありました。
Тымовск駅(ティモフスク駅)のようです。
という事は定刻通りか。
ここはもう北緯50度線の先、北樺太です。
日本政府も認めるれっきとしたロシアです。
ちなみに、このТымовск駅の他、
Южно-Сахалинск駅
(ユジノサハリンスク駅、豊原駅)、
Новоалександровка駅
(ノヴァアレクサンドロフカ駅、小沼駅)、
Сокол駅(ソコル駅、大谷駅)、
Долинск駅(ドーリンスク駅、落合駅)、
Взморье駅(ヴズモリエ駅、白浦駅)、
Макаров駅(マカロフ駅、知取駅)、
Поронайск駅(ポロナイスク駅、敷香駅)、
Смирных駅(スミルヌィフ駅、気屯駅)、
Ноглики駅(ノグリキ駅)の各駅では
駅が近付くとトイレが施錠されてしまいます。
というのも、このトイレは垂れ流し式で
これら市街地の駅付近で用を足されると困るからです。
…逆に言うとこれ以外の駅は垂れ流しOKという事です。
色んな意味で気を付けましょう。
Тымовск駅を発車。
ここでも牛達が草を食んでいます。
道北に比べるとその数はかなり少ないですが。
人の気配の無い森がひたすら続きます。
プチシベリア鉄道的な感じです。
シベリア鉄道はこれが5日間くらいずっと続くんだよな…
道路も並走しています。
この未舗装路で制限速度は80km/h。
おそロシア。
橋のところだけは舗装されています。
ロシアの列車では車掌に頼むと
紅茶やコーヒーを淹れてくれるので頼んでみました。
日本でイメージされるロシアンティーとは違い
ジャムを入れたりはしませんが、
砂糖がどっさり入っていて甘いです。
冬山登山でも砂糖を大量に入れた紅茶を飲むらしいし、
寒冷地のロシアならではなのかな?
この紅茶のコップのデザイン良いなー。
車掌さんに頼んでこっそり買えたりしないかな?
とか話し合っていたら…
何と車掌さんの方からコップを売りにきました。
見抜かれた!?
元社会主義国家でこれだけ商売が上手いとは…
貴重なお土産ゲットです。
₽1,100也。
Сахалин州として北方領土まで描かれているので
日本では余りおおっぴらに使えませんが。
Ныш駅(ニーシュ駅)。
最後の停車駅です。
北樺太の大地を終着駅目指してひた走ります。
操車場に入ってきました。
ラッセル車などが留置されています。
列車は速度を落としていきます。
そして…
9:59、Ноглики駅(ノグリキ駅)に到着。
Сахалин最北端の駅であり、
ロシア最東端の駅でもあります。
これこそ真の最果ての地。
この先にはもう一切の線路がありません。
道は続いていますが。
このバスに乗ると更に北のОха(オハ)まで行く事が出来ます。
凄まじい悪路を延々6時間も走る上に
Охаで一晩泊まらないと帰れないので止めましたが。
折角ここまで来たので観光します。
Ноглики駅から北へ。
某地球の歩き方には殆ど何も書かれていないけど、
果たして何があるのか…
何かあるのか…
列車が踏切を塞いでいました。
これから折り返すようです。
乗ってきた1番列車全景。
これを撮っていたら運転手さんがキメ顔してくれました。
道路が舗装されていないので
自動車が通ると酷く砂埃が舞います。
カンボジアを思い起こさせます。
雨で泥濘んでいないだけマシか…
Оха行きのバスが横を走り去ります。
ここから6時間か…
西部劇に出てきそうな建物。
今も人が住んでいるのだろうか…
と思っていたら、何処からともなく犬が。
番犬…にしては小さ過ぎるか。
Сахалинでは犬は基本放し飼いです。
ここでシベリアンハスキーとかが出て来たら
ガチで死を覚悟するな…
ふと空を見たら飛行機が飛んでいました。
こう見えてНогликиには空港もあります。
ところで、НогликиからОхаまでは嘗て軽便鉄道が通っていました。
基本的には材木輸送用で旅客輸送は稀にしか行われず、
行われたとしてもバスに負けず劣らず
脱線寸前の物凄い揺れようだったそうです。
その軽便鉄道の廃線跡を探してみます。
ん?道に落ちていたこれは…
犬釘?
軽便鉄道の痕跡かな?
行き止まりのところに土手に上がる踏み跡がありました。
これはもしや…
やはり廃線跡か!
レールは全て剥がされていますが、
枕木やバラストはかなり残っています。
土手からは池が見えてとても綺麗。
対岸ではロシア人達が水遊びしています。
でも、水がやけに赤いな…
鉄分が多いのかな?
これより先は草木が生い茂っていて無理でした。
ダニの多いСахалинで藪漕ぎはしたくないので。
今度は市街地を目指します。
ボロボロの橋でТымь川(トゥイミ川)の支流を渡ります。
橋の先はまさかのボードウォーク。
湿地なのかな?
漸く市街らしき場所に辿り着きました。
保育園があり、子供達が元気に遊んでいます。
…ここで写真を撮っていたら
来週の保護者便りで
「不審な日本人4人組が目撃されました。」
って書かれちゃう、ヤバイヤバイ。
アパートの窓から覗いてくるネコ達。
“Кто вы? Откуда вы?”とか言ってるのかな?
Ногликиの目抜き通り、
Советская通り(ソヴェツカヤ通り)に出ました。
街路樹が立ち並んでいて中々雰囲気が良いです。
Площадь Победы(勝利公園)。
第2次世界大戦での勝利を記念した勝利公園(広場)は
ロシアの各地に点在しています。
ここはやっぱり対日戦だろうと思ったら、
対独戦の戦勝記念でした。
欧州で良く見られる愛の南京錠。
Сахалинも欧州なんだな…
欄干もハート型になっており、
愛の南京錠を最初から意識した造りになっています。
橋はこんなにもショボいですが。
橋が渡っているのはただの排水溝です。
この橋にお金を掛けるなら
あのТымь川支流の橋を修繕すべきでは…
Ноглики唯一(?)の喫茶店。
張掖を思い起こさせるセンスです。
営業時間内の筈なのですが、
外国人相手が面倒なのか帰されてしまいました。
仕方が無いので、スーパーで買って勝利公園で昼食。
Мороженое(アイスクリーム)は
日本のものより遥かにコクがあって美味しい!
稚内牛乳と良い勝負。
お腹を満たしたら街歩き再開。
これは教会。
ロシアと言ったらロシア正教会。
…何だか屋根がブリキみたいだな。
Советская通りを東に進みます。
段々、建物がショボくなってきました。
木造の家は先住民族の人が住んでいるとか。
冬とか寒くないのかな…
(冬のНогликиは-20℃を下回る。)
舗装路の終点にお目当ての建物がありました。
地球の歩き方のНогликиのページに
市街地の観光地として唯一載っていた
Ногликский Муниципальный
Краеведческий Музей
(ノグリキ市立郷土博物館)です。
…ってまた人の気配が無い。
扉を開けるべきか否か迷っていたら、
後ろからおばさんに
「博物館に入りたいのかい?」
と声を掛けられ、鍵を開けて入れてくれました。
そのままおばちゃんが解説をしてくれました。
ニヴヒ等の先住民族についての展示が多いです。
当然の如くおばちゃんの解説はロシア語オンリー。
その中で辛うじて知っている単語を繋げ
身振り手振りと合わせて意味を何と無く理解します。
先住民族の住居の模型。
住居はともかく、犬の模型が何故埴輪みたいなんだ…
この緩さが鄙びていて何とも良い。
天然ガス開発プロジェクト、
Сахалин1(サハリン1)についての展示もあります。
Ногликиを始めとして、
北樺太の街はほぼ全て資源開発で成り立っています。
北樺太というか、シベリアの街はほぼそうですね。
Ногликиに棲む生き物達の剥製。
こんなクマが現れたら死ぬな…
こちらはアザラシの剥製。
何だか詰め物の形が変です。
うーん、ゆる博物館。
少数民族の人の芸術作品なんかも展示されています。
駅ノートならぬ博物館ノート。
日本人の記載も幾つか見受けられます。
っていうか、ロシア語の筆記体意味不明過ぎワロタ。
なお、この博物館が今回の旅行の最北到達点。
北緯51°48′51″。
半田から17度北です。
随分北までやってきたんだなぁ…
ロンドンとほぼ同じと聞いてしまうと
大して北では無いように感じてしまいますが。
もうちょっと北そうな地名を挙げると
同じロシアのИркутск(イルクーツク)でしょうか。
博物館を見終えたら1番バスで駅へと戻ります。
博物館までバスが走っているという話でしたが、
実際は道路工事の所為か勝利公園の辺りまででした。
Ноглики駅に戻ってきました。
意外と新しい駅舎の待合室で列車の時刻を待ちます。
16:44発604列車Южно-Сахалинск行きに乗車。
604列車の時刻表。
1列車と違い、小さな駅にも律儀に停まっていきます。
1,2列車は寝台特急、603,604列車は夜行急行という感じです。
そんな訳で604列車はこんな駅にも停まります。
駅舎はおろかホームも無い、
駅名標だけの衝撃的なАрги-Паги駅(アルギパギ駅)に到着。
糠南駅はまだ恵まれていたのだろうか…
しかも、そういう駅は全く珍しくありません。
このАдо-Тымово駅(アドティモーヴァ駅)もそう。
すぐ迎えの車に乗れるから効率的…?
北樺太の夕暮れ。
日が沈むと漆黒の闇が辺りを支配します。
Онор駅(オノル駅)。
北樺太最後の駅です。
南樺太が今も日本だったら
ここがロシア側の国境駅となっていた事でしょう。
この駅と次の駅の間に北緯50度線があります。
何だこの森はと思われるかも知れませんが、駅です。
Южная-Хандаса駅(ユジナヤハンダサ駅)。
南樺太最北の駅。
日本名はずばり「半田駅」です。
まさかの半田。
(正確には「南半田沢駅」とすべきかも。)
但し、日本時代にはここまで鉄道は来ていませんでした。
こんな時間にここで降ろされたくはないな…
Победино駅(ポベジノ駅、古屯駅)。
嘗ての日本最北端の駅です。
但し、軍用鉄道だったので
時刻表には載っていませんでした。
Смирных駅(スミルヌィフ駅、気屯駅)。
ここでちょっと長時間停車。
ロシア人達が駅のホームで紫煙を燻らせています。
寒いくらいだな…
煙草の煙を避けて深呼吸したら部屋に戻り、
明日の早い朝に備えて寝ました。
コメント